退職金の税金は、勤続年数でどう変わるか

最終更新: 2026年8月11日

退職金は税制上かなり優遇されています。ただしその優遇の大きさは、 勤続年数で決まります。しかも増え方が途中で変わるので、 20年目の前後で段差ができます

非課税になる枠の作られ方

勤続20年まで:40万円 × 年数(最低80万円)
20年を超えた分:800万円 + 70万円 ×(年数 − 20)

21年目からは、1年あたりの増え方が40万円から70万円へ上がります。 具体的には、19年目→20年目で¥400,000、 20年目→21年目で¥700,000増えます。

さらに、控除を超えた部分もその半額だけが課税対象です (勤続5年以下などの例外はあります)。 給与に比べると、かなり手厚い扱いになっています。

同じ退職金でも、勤続年数で手取りが変わる

退職金2,000万円を受け取ったとして、勤続年数だけを変えて計算しました。

勤続 非課税の枠 課税される額 税金 手取り
10年 ¥4,000,000 ¥8,000,000 ¥2,029,284 ¥17,970,716
15年 ¥6,000,000 ¥7,000,000 ¥1,694,454 ¥18,305,546
19年 ¥7,600,000 ¥6,200,000 ¥1,449,562 ¥18,550,438
20年 ¥8,000,000 ¥6,000,000 ¥1,388,722 ¥18,611,278
21年 ¥8,700,000 ¥5,650,000 ¥1,282,252 ¥18,717,748
25年 ¥11,500,000 ¥4,250,000 ¥856,372 ¥19,143,628
30年 ¥15,000,000 ¥2,500,000 ¥405,703 ¥19,594,297
35年 ¥18,500,000 ¥750,000 ¥113,288 ¥19,886,712
38年 ¥20,600,000 ¥0 ¥0 ¥20,000,000

勤続10年と38年では、同じ2,000万円を受け取っても 手取りが¥2,029,284違います。 勤続30年を超えたあたりから税金は急速に小さくなり、 38年では非課税枠が退職金を上回って0円になりました。

「20年の壁」は転職の判断材料になるか

1年あたりの控除が40万円から70万円に増えるため、 長く勤めた人ほど加速度的に有利になります。 これは制度上、明らかに長期勤続を優遇している設計です。

ただし、これを理由に転職をやめるべきかは別の話です。 控除が増えるといっても、増えるのは非課税の枠であって、 退職金そのものではありません。 転職で年収が上がるなら、その差のほうがずっと大きいのが普通です。

実際に効くのは、勤続年数がリセットされることのほうです。 20年勤めた会社を辞めて別の会社に20年勤めると、 控除は「20年ぶん×2回」になり、「40年ぶん1回」より小さくなります。 退職金制度のある会社を移るときは、ここを見ておく価値があります。

退職金の額が変わるとどうなるか

勤続30年(非課税の枠 ¥15,000,000)で、退職金の額だけを変えた場合です。

退職金 税金 手取り 実質の負担率
1,000万円 ¥0 ¥10,000,000 0%
1,500万円 ¥0 ¥15,000,000 0%
2,000万円 ¥405,703 ¥19,594,297 2%
2,500万円 ¥1,084,523 ¥23,915,477 4.3%
3,000万円 ¥1,861,869 ¥28,138,131 6.2%

枠に収まっているうちはまったくかかりません。 超えても半額しか課税されないので、負担率は3,000万円でも 6.2%程度にとどまります。 同じ額を給与でもらった場合とは、比べものになりません。

iDeCoを併用している人は要注意

iDeCoを一時金で受け取ると、同じ退職所得控除の枠を使います。 会社の退職金で枠を使い切っていると、iDeCoの分がまるごと課税対象になることがあります。

勤続30年で退職金2,000万円なら、枠¥15,000,000のうち ¥0しか残りません。 ここにiDeCoの残高が乗ると、超えた分の半額に課税されます。

対策として、受け取る年をずらす方法があります。 条件と具体的な影響額は次の2本にまとめました。

受け取る前に確認すること

  1. 「退職所得の受給に関する申告書」を出す。 これを出さないと、控除が使われないまま一律20.42%が源泉徴収されます。 あとで確定申告すれば戻りますが、手間が増えるだけです。
  2. 勤続年数の数え方を確認する。 1年未満の端数は切り上げです。あと数日で1年増えるなら、退職日をずらす価値があります。
  3. iDeCoや企業型DCの受け取り時期を決める。 同じ年に重ねると枠を取り合います。
  4. 翌年の住民税と社会保険料を見込む。 退職金の所得は分離課税ですが、退職後は健康保険の切り替えなどで支出が変わります。

自分の条件で計算する

本記事の金額は概算です。勤続5年以下の役員等に対する特例、障害による退職の上乗せ、同じ年に複数の退職金を受け取る場合の調整などは考慮していません。退職所得控除の年数の数え方や、iDeCo・企業型DCとの重複期間の調整には細かいルールがあります。実際の税額は勤務先または税務署にご確認ください。

このツールが使っている税率・料率は 2026年8月時点のものです。 使用している数値と出典を見る

このページの数値と出典

このページで使っている値と、その根拠です。制度の数値も各社の料金も改定されるため、 判断の前には出典元でお確かめください。

給与の手取り(所得税・住民税・社会保険料)2026年8月時点

  • 健康保険(本人負担)5.0%協会けんぽ全国平均10%の半分
  • 介護保険(40〜64歳・本人負担)0.8%
  • 厚生年金(本人負担)9.15%18.3%の半分
  • 雇用保険(本人負担)0.6%一般の事業
  • 所得税の基礎控除58〜95万円令和7年分から合計所得金額に応じた段階制。132万円以下は95万円
  • 住民税の基礎控除43万円
  • 住民税(所得割)10%
  • 住民税(均等割)5,000円自治体により差があります
  • 復興特別所得税所得税額の2.1%
  • 給与所得控除令和7年分以降の速算表最低保障額65万円(収入190万円以下)
  • 所得税の税率5%〜45%の7段階(累進)

社会保険料は全国平均の料率を年収に対して概算で掛けています。実際は標準報酬月額の等級表で決まり、加入している健康保険組合や都道府県によって変わります。扶養・生命保険料控除などの所得控除は含めていません。

出典: 国税庁「所得税の税率」国税庁「給与所得控除」国税庁「基礎控除」全国健康保険協会「保険料額表」日本年金機構「厚生年金保険の保険料」

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