iDeCoの受け取り方で税金が変わる
最終更新: 2026年8月1日
iDeCoは掛けるときに節税できる制度としてよく紹介されますが、 実は受け取るときに課税される制度でもあります。非課税ではなく、 課税を先送りしているだけです。
そして、この受け取り方の選択で手取りが数十万円から百万円単位で変わることがあります。 掛金の節税額はiDeCo節税額シミュレーターで計算できますが、 この記事では出口のほうを整理します。
先に結論
- 退職金がない人:一時金で受け取ればほぼ非課税で済むことが多い
- 退職金がある人:受け取る年をずらすか、一部を年金にする工夫が要る
- 迷ったら:受け取りの手続きをする前に、金額を持って税理士か 金融機関の窓口に確認する。取り返しがつかない選択なので、ここだけは自己判断しない
受け取り方は3つある
| 受け取り方 | 税の扱い | 向いている人 |
|---|---|---|
| 一時金(一括) | 退職所得。退職所得控除を引いた後、さらに1/2にしてから課税 | 退職金がない・少ない人。控除の枠に収まる人 |
| 年金(分割) | 雑所得。公的年金等控除の対象。ただし社会保険料に影響する | 退職金が多く、一時金では控除を超えてしまう人 |
| 併用 | 一部を一時金、残りを年金で。両方の控除を使える | 退職金があり、控除を使い切ってしまう人 |
併用ができるかは金融機関によります。加入している金融機関が対応しているかは、 受け取りの数年前までに確認しておくと選択肢が広がります。
一時金が有利になりやすい理由
退職所得の計算は、他の所得と比べてかなり優遇されています。
課税される退職所得 =(受取額 − 退職所得控除)× 1/2
控除を引いたうえ、さらに半分にしてから課税されます。 しかも他の所得と合算しない分離課税なので、税率が跳ね上がることもありません。
退職所得控除の計算
| 加入年数 | 控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 加入年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(加入年数 − 20年) |
加入30年なら1,500万円、加入20年なら800万円が控除されます。 iDeCoの残高がこの枠に収まっていれば、一時金で受け取っても税金は0円です。 退職金のない自営業やフリーランスの人は、たいていこのパターンになります。
なお1年未満の端数は切り上げます。加入20年1ヶ月なら21年として計算されるため、 あと数ヶ月で1年増えるなら受け取りを待つだけで控除が70万円増えることがあります。
問題は「退職金と重なるとき」
会社員が悩むのはここです。勤務先の退職金にも同じ退職所得控除が使われるため、 枠の取り合いになります。
同じ年に両方を受け取ると合算して計算され、しかも控除額は 勤続年数とiDeCo加入年数の重複する期間を除いて計算されます。 「勤続35年で1,850万円、iDeCo加入20年で800万円、合わせて2,650万円の控除」とはなりません。 期間が重なっていれば、長いほうの期間で一度だけ計算されるイメージです。
たとえば勤続35年・退職金1,800万円の人がiDeCoを1,000万円持っていると、 控除1,850万円に対して合計2,800万円となり、はみ出した分に課税されます。
受け取る年をずらす
年をずらせば控除を分けて使える場合がありますが、必要な間隔は順番によって違います。
- iDeCoを先に受け取り、後で退職金:iDeCoの受け取りから 19年あける必要があるとされ、現実的にはほぼ不可能です。 逆に言えば、60歳でiDeCo、65歳で退職金という順番だと調整の対象になります。
- 退職金を先に受け取り、後でiDeCo:こちらは必要な間隔が短く、 2026年1月から10年に変わりました(従来は5年)。 「5年空ければよい」という情報が今も多く出回っていますが、 2026年以降に受け取る人には当てはまりません。
この論点は改正が入ったばかりです
退職金を先に受け取った場合の期間は、長く5年とされてきたものが10年に延長されました。 ネット上の記事や書籍には5年を前提にしたものが多く残っています。 実際に受け取る前に、必ず国税庁の情報を確認するか、税理士にご相談ください。 受け取りの手続きは取り消せないため、ここは慎重に判断すべき部分です。
年金で受け取る場合の注意
年金形式なら公的年金等控除が使えます。65歳以上で公的年金等の収入が 110万円以下なら所得は0になるため、公的年金の受給額に余裕があれば有効な選択肢です。
ただし、次の2点は見落とされがちです。
- 公的年金と合算されます。老齢基礎年金・老齢厚生年金と足して控除を超えると 課税されます。iDeCo単独で見ても意味がありません。
- 国民健康保険料・介護保険料が上がることがあります。 雑所得が増えると保険料の計算に反映されるため、税金は増えなくても保険料で 持っていかれることがあります。医療費の自己負担割合が変わる可能性もあります。
また、年金形式では受け取りのたびに給付事務手数料(1回440円程度)がかかります。 年6回・20年で5万円以上になるため、回数の設定も確認してください。
判断の手順
- iDeCoの残高見込みを把握する: 積立投資シミュレーターで60歳時点の見込み額を出します。
- 勤務先の退職金の額を確認する:就業規則か人事に聞きます。 税額は退職金の税金シミュレーターで計算できます。
- 合算して控除に収まるか見る:収まるなら一時金一択です。 超えるなら、年をずらす・一部を年金にする・併用するのどれかを検討します。
- 受け取りの1〜2年前に専門家に確認する:控除の期間の判定は複雑で、 改正も入ります。金額が大きい人ほど、相談料を払う価値があります。
受け取り開始の年齢にも注意
iDeCoは原則60歳から受け取れますが、60歳時点で加入期間が10年に満たない場合、 受け取り開始が繰り下がります(最長65歳)。50代から始めた人は、 60歳ですぐ受け取れると思い込まないでください。
受け取りは75歳までに開始する必要があります。繰り下げている間も運用は続けられますが、 口座管理手数料はかかり続けます。
それでもiDeCoは有利か
出口の話をすると不安になりますが、多くの人は掛けたときの節税額のほうが大きくなります。 課税所得330万〜695万円の会社員なら、掛金の約30%が毎年戻る一方、 受け取り時は退職所得控除と1/2課税でかなり圧縮されるためです。
戻る金額はiDeCo節税額シミュレーターで確認できます。 NISAとの使い分けはNISA vs iDeCo 比較を、 老後に必要な額から逆算したい場合は老後資金シミュレーターをご覧ください。
注意すべきなのは「退職金が多い会社員が、何も考えずに同じ年に一時金で受け取る」 というケースです。当てはまりそうなら、この記事を読んだことを覚えておいて、 受け取りの前に一度確認してください。
本記事は一般的な制度の説明であり、個別の税務判断ではありません。退職所得控除の期間の調整は勤続年数・加入年数・受け取りの順序や間隔によって結果が変わり、制度改正も入ります。実際の受け取りにあたっては、国税庁の情報を確認するか、税理士にご相談ください。運営者は税理士等の有資格者ではありません。