繰り上げ返済と積立投資、どちらに回すのが得か

最終更新: 2026年8月11日

まとまったお金ができたとき、住宅ローンを繰り上げ返済するか、投資に回すか。 「金利より高い利回りが取れるなら投資」とよく言われますが、 実際には住宅ローン控除が絡むので、そう単純ではありません。 条件を固定して全部計算しました。

計算の前提

  • ローン残高 3,000万円、残りの返済期間 30年(元利均等)
  • 手元の資金 300万円を、繰り上げ返済(期間短縮型)か投資のどちらかに全額回す
  • 30年後にどちらが多く得したかで比べる
  • 繰り上げ返済の得 = 払わずに済んだ利息 − 受け取れなくなる住宅ローン控除
  • 投資の得 = 増えた分(課税口座なら利益に20.315%)

結論:分岐点はほぼ「ローンの金利」と同じ

金利ごとに、投資がこれを超えれば有利になる利回り(分岐点)を出しました。 住宅ローン控除が10年残っている場合と、すでに終わっている場合を並べています。

ローン金利 控除が10年残っている 控除が終わっている
繰上げの得 分岐点 繰上げの得 分岐点
0.4% ¥151,606 0.16% ¥361,606 0.38%
0.6% ¥347,431 0.37% ¥557,431 0.57%
0.8% ¥553,908 0.57% ¥763,908 0.76%
1% ¥771,533 0.77% ¥981,533 0.95%
1.3% ¥1,120,008 1.06% ¥1,330,008 1.23%
1.5% ¥1,367,760 1.26% ¥1,577,760 1.42%
2% ¥2,045,212 1.75% ¥2,255,212 1.89%

分岐点は非課税口座(NISAなど)で運用した場合の年利回り。この利回りを超えられるなら投資が有利、 下回るなら繰り上げ返済が有利という意味です。

読み取れることは単純です。分岐点は、ほぼローンの金利そのもの。 そして住宅ローン控除が残っていると、分岐点はさらに0.2ポイントほど下がります。 控除で戻ってくるぶん、繰り上げ返済の旨みが削られるからです。

金利1%のケースで具体的に見ると、300万円を繰り上げると 利息が¥981,533減り、完済が41ヶ月早まります。 ただし控除が10年残っていれば¥210,000ぶんの控除を失うので、 正味の得は¥771,533まで縮みます。 これは30年で年0.77%の利回りに相当します。

金利 × 期待利回りの早見表

控除が終わっている前提で、300万円を30年運用した場合の差額です。 プラスなら投資が有利、マイナスなら繰り上げ返済が有利。

ローン金利\期待利回り 1%2%3%4%5%
0.4% + 68万円 + 207万円 + 392万円 + 637万円 + 960万円
0.6% + 49万円 + 188万円 + 372万円 + 617万円 + 941万円
0.8% + 28万円 + 167万円 + 352万円 + 597万円 + 920万円
1% + 6万円 + 145万円 + 330万円 + 575万円 + 898万円
1.3% − 29万円 + 110万円 + 295万円 + 540万円 + 864万円
1.5% − 53万円 + 86万円 + 270万円 + 515万円 + 839万円
2% − 121万円 + 18万円 + 203万円 + 447万円 + 771万円

色が濃いほう(プラス)が投資有利。30年という長さがあるため、 利回りが1ポイント違うだけで差が大きく開きます。

表を見ると、期待利回り2%以上ならほぼすべての金利帯で投資が勝ちます。 これは金利が低い時代のローンを抱えている人が多い今の状況では、 数字のうえでは投資に分があるということです。

それでも数字だけで決められない理由

ここまでの計算には、決定的に抜けているものがあります。 繰り上げ返済の効果は確実で、投資の利回りは確実ではないことです。

金利1%のローンを繰り上げれば、1%ぶんの利息は必ず消えます。 一方、期待利回り4%は「平均するとそのくらい」という話で、 30年のうちには元本が3割減る年もあります。 同じ「年4%」でも、性質がまったく違います。

そのため、次のような場合は分岐点を下回っていても繰り上げ返済を選ぶ意味があります。

  • 値動きが気になって眠れない — 精神的な負担も立派なコストです
  • 定年までに完済したい — 収入が減ってからの返済は、利回り以上にきつい
  • 変動金利で借りている — 今後金利が上がれば、繰り上げの効果も上がります
  • すでに十分な投資をしている — 資産の偏りを直す意味があります

逆に、手元の現金を減らしすぎないことも重要です。 繰り上げ返済したお金は取り戻せません。 失業・病気・修繕といった出費に備える生活防衛資金を残したうえで、 余った分をどちらに回すかという順番になります。

やってはいけない繰り上げ返済

損得以前の問題として、返済期間が10年未満になる期間短縮型の繰り上げ返済には 注意が必要です。住宅ローン控除は返済期間10年以上であることが条件なので、 短縮しすぎると控除そのものが受けられなくなります

「あと少しで完済だから一気に縮めよう」としたら、 残っていた控除が全部消えた、というのが最悪のパターンです。 控除期間中に大きく繰り上げるなら、 返済額軽減型(期間は変えず毎月の返済額を下げる)を選べば、この問題は起きません。

なお、繰り上げ返済しても控除が減らないケースもあります。 残高が控除の借入限度額を超えている場合です。 たとえば限度額3,000万円に対して残高4,000万円なら、 300万円繰り上げても対象は限度額のままなので控除額は変わりません。 この場合、上の表の「控除が終わっている」列で判断してください。

自分の条件で計算する

この記事は残高3,000万円・残り30年という一例です。 残り期間が短いほど繰り上げの効果は小さくなり、判断は変わります。 次のツールで自分の数字を入れてみてください。

考え方の整理には繰り上げ返済しないほうがいいは本当か、 金利タイプの選び方は変動 vs 固定の比較もどうぞ。

本記事の金額は元利均等返済を前提とした概算です。繰り上げ返済の手数料・保証料の戻り、団体信用生命保険、金利の変動、投資の税制(NISAの非課税枠の上限など)は考慮していません。住宅ローン控除の適用可否や限度額は入居年・住宅の性能・所得で変わります。投資は元本が保証されるものではなく、記事の利回りは特定の商品の運用成果を示すものでも、推奨するものでもありません。判断は金融機関・税務署・専門家にご確認のうえで行ってください。

このツールが使っている控除の条件と上限は 2026年8月時点のものです。 使用している数値と出典を見る

このページの数値と出典

このページで使っている値と、その根拠です。制度の数値も各社の料金も改定されるため、 判断の前には出典元でお確かめください。

住宅ローン・住宅ローン控除2026年8月時点

  • 住宅ローン控除の控除率年末残高の0.7%
  • 借入限度額(認定長期優良住宅・低炭素)4,500万円子育て世帯等は5,000万円
  • 借入限度額(ZEH水準省エネ住宅)3,500万円子育て世帯等は4,500万円
  • 借入限度額(省エネ基準適合住宅)3,000万円子育て世帯等は4,000万円
  • 借入限度額(中古・認定/ZEH/省エネ)3,000万円
  • 借入限度額(中古・その他)2,000万円
  • 返済負担率年収400万円未満30%/400万円以上35%フラット35の基準
  • 抵当権設定の登録免許税借入額の0.4%
  • 金銭消費貸借契約書の印紙税1,000万円超5,000万円以下で2万円

住宅ローン控除は入居年・住宅の性能・世帯の状況によって条件が細かく分かれ、改正も頻繁です。審査金利や返済負担率は金融機関ごとに異なります。実際の借入可否と条件は金融機関の審査によります。

出典: 国税庁「住宅借入金等特別控除」国土交通省「住宅ローン減税」住宅金融支援機構「フラット35」国税庁「印紙税額の一覧表」

サイト全体で使っている数値の一覧は 計算の根拠と出典にまとめています。 一次情報と突き合わせた記録も同じページに公開しています。