開業届と青色申告は、いつ出すと得か

最終更新: 2026年8月12日

副業が続きそうになると出てくる話です。 結論から言うと、売上がある程度あるなら出したほうが得ですが、 出さないほうがいい人もいます。両方を書きます。

青色申告で何が変わるか

いちばん大きいのは青色申告特別控除です。 経費とは別に、所得から差し引ける枠がもらえます。

  • 65万円 — 複式簿記で記帳し、電子申告する場合
  • 10万円 — 簡易な帳簿の場合

ほかにも、赤字を翌年以降に繰り越せる、家族に払う給与を経費にできる、 といった扱いがあります。ただし副業の規模では、 控除の効果がほとんどすべてと考えて差し支えありません。

いくら変わるのか

本業の年収500万円、経費は売上の20%として計算しました。 青色は65万円の控除が使える前提です。

副業の売上 経費 白色の税金 青色の税金
¥500,000 ¥100,000 ¥80,840 ¥0 −¥80,840
¥1,000,000 ¥200,000 ¥161,680 ¥30,315 −¥131,365
¥2,000,000 ¥400,000 ¥378,749 ¥191,995 −¥186,754
¥3,000,000 ¥600,000 ¥622,109 ¥424,379 −¥197,730

売上200万円で年¥186,754の差。 毎年続くので、記帳の手間に見合うかどうかがそのまま判断基準になります。 会計ソフトを使えば記帳の手間はかなり減るので、 ソフトの利用料(それ自体も経費です)と比べてみてください。

売上が小さいうちは差も小さくなります。 表の上のほうを見ると、売上50万円では手間に見合わないと 感じる方もいるはずです。それも正しい判断です。

提出の期限

書類 いつまでに 遅れると
開業届 事業を始めてから1か月以内 罰則は特にありません。あとから出せます
青色申告承認申請書 その年の3月15日まで
(年の途中の開業なら、開業日から2か月以内)
その年は白色。青色になるのは翌年から

効くのは青色申告承認申請書のほうです。 開業届は遅れても実害がほとんどありませんが、 青色の申請は1日でも過ぎると、その年はもう青色になれません。 1年分の控除が消えるので、2つ同時に出すのが確実です。

どちらも税務署に提出します。郵送でも、電子申告でも出せます。 記入すること自体は多くありません。

出さないほうがいい場合

メリットだけを見て出すと、あとで困ることがあります。

1. 失業保険を受け取る予定がある

会社を辞めたあとに失業保険を受け取るつもりなら、注意が必要です。 開業していると「就職した」とみなされ、受給できないことがあります。 副業として始めたつもりでも、開業届を出していれば事業を営んでいる扱いになりえます。

退職の予定があるなら、ハローワークに先に確認するのが確実です。 失業保険の額は失業保険の計算で確かめられます。

2. 健康保険の扶養に入っている

配偶者の健康保険の扶養に入っている場合、 加入先によっては開業していること自体を理由に扶養から外す 扱いをするところがあります。収入の額とは別の基準です。

扶養から外れると自分で保険料を払うことになり、 青色申告の控除で得られる額を簡単に超えます。 加入している健康保険組合に確認してからにしてください。

3. 記帳を続けられそうにない

65万円の控除には複式簿記での記帳と電子申告が必要です。 これができないと10万円にとどまります。 その額なら、白色のままでも大きな違いはありません。

会計ソフトを使えば難しくはありませんが、 毎月入力する習慣は必要です。 1年分をまとめて入力しようとして挫折するのが、よくある失敗です。

雑所得のままだと何が違うか

青色申告ができるのは事業所得の場合です。 副業が雑所得の扱いだと、開業届を出しても青色の控除は使えません。

どちらになるかは、継続しているか、独立して営んでいるか、 相当の時間を割いているかといった実態で判断されます。 売上の規模や帳簿の有無も見られます。 「開業届を出したから事業所得」という単純な話ではない、という点だけ押さえておいてください。

判断の順番

  1. 失業保険と扶養に該当しないか確認する。 ここに当たるなら、税金の話より先にこちらです。
  2. 売上の見込みで、差額を計算する。 上の表かシミュレーターで、年いくら変わるかを出します。
  3. 記帳を続けられるか考える。 続かないなら控除は10万円止まりで、差はほとんどなくなります。
  4. 出すなら2つ同時に。 青色の申請だけ忘れると、1年待つことになります。

関連するツールと記事

本記事の金額は概算です。青色申告特別控除の要件(複式簿記・期限内申告・電子申告など)や、事業所得と雑所得の区分は個別の実態で判断されます。失業保険の受給可否はハローワーク、健康保険の扶養の判定は加入している保険者の判断によります。実際の手続きは税務署・ハローワーク・保険者にご確認ください。

このツールが使っている税率・料率は 2026年8月時点のものです。 使用している数値と出典を見る

このページの数値と出典

このページで使っている値と、その根拠です。制度の数値も各社の料金も改定されるため、 判断の前には出典元でお確かめください。

給与の手取り(所得税・住民税・社会保険料)2026年8月時点

  • 健康保険(本人負担)5.0%協会けんぽ全国平均10%の半分
  • 介護保険(40〜64歳・本人負担)0.8%
  • 厚生年金(本人負担)9.15%18.3%の半分
  • 雇用保険(本人負担)0.6%一般の事業
  • 所得税の基礎控除58〜95万円令和7年分から合計所得金額に応じた段階制。132万円以下は95万円
  • 住民税の基礎控除43万円
  • 住民税(所得割)10%
  • 住民税(均等割)5,000円自治体により差があります
  • 復興特別所得税所得税額の2.1%
  • 給与所得控除令和7年分以降の速算表最低保障額65万円(収入190万円以下)
  • 所得税の税率5%〜45%の7段階(累進)

社会保険料は全国平均の料率を年収に対して概算で掛けています。実際は標準報酬月額の等級表で決まり、加入している健康保険組合や都道府県によって変わります。扶養・生命保険料控除などの所得控除は含めていません。

出典: 国税庁「所得税の税率」国税庁「給与所得控除」国税庁「基礎控除」全国健康保険協会「保険料額表」日本年金機構「厚生年金保険の保険料」

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