生前贈与は、暦年と相続時精算課税のどちらが得か
最終更新: 2026年8月12日
「毎年110万円ずつ渡せば非課税」。 よく知られた方法ですが、どちらの制度でやるかで結果が変わるようになりました。 同じ行為なのに、です。
暦年課税
相続前7年ぶんが
相続財産に足し戻される
(4〜7年前の分からは合計100万円を差し引ける)
相続時精算課税
年110万円の基礎控除は
足し戻されない
2024年に相続時精算課税へ年110万円の基礎控除が新設され、 しかもこちらは足し戻しの対象外になりました。 一方の暦年課税は足し戻す期間が3年から7年へ延びていきます。 有利不利が入れ替わったのが、いまの状況です。
実際にいくら違うのか
前提:遺産10,000万円、相続人は配偶者と子2人、 毎年110万円を相続の直前まで贈与した場合。 配偶者の税額軽減は適用しています。
| 贈与した年数 | 贈与の総額 | 暦年で足し戻される額 | 暦年の相続税 | 精算課税の相続税 | 差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3年 | ¥3,300,000 | ¥3,300,000 | ¥3,150,000 | ¥2,902,500 | −¥247,500 |
| 5年 | ¥5,500,000 | ¥4,500,000 | ¥3,075,000 | ¥2,737,500 | −¥337,500 |
| 7年 | ¥7,700,000 | ¥6,700,000 | ¥3,075,000 | ¥2,572,500 | −¥502,500 |
| 10年 | ¥11,000,000 | ¥6,700,000 | ¥2,827,500 | ¥2,325,000 | −¥502,500 |
| 15年 | ¥16,500,000 | ¥6,700,000 | ¥2,415,000 | ¥1,968,750 | −¥446,250 |
| 20年 | ¥22,000,000 | ¥6,700,000 | ¥2,043,750 | ¥1,625,000 | −¥418,750 |
精算課税で足し戻される額は、どの年数でも0円です (年110万円の基礎控除の範囲内のため)。 贈与をまったくしなかった場合の相続税は¥3,150,000でした。
どの年数でも相続時精算課税のほうが安くなりました。 差がいちばん大きいのは7年以上続けた場合で、 ¥502,500。 暦年課税では670万円が相続財産に戻ってくるのに対し、 精算課税では0だからです。
暦年課税の足し戻しの仕組み
なぜ670万円なのか、内訳を書いておきます。
- 直近3年ぶん:110万円 × 3年 = 330万円(全額)
- 4〜7年前の4年ぶん:110万円 × 4年 = 440万円、ここから100万円を差し引いて340万円
- 合計 670万円
8年以上前の贈与は足し戻されないので、 7年より長く続ければ、それ以上は不利になりません。 表で10年目以降の足し戻しが同じ額なのは、そのためです。
それでも暦年課税を選ぶ場合
金額だけで決められない、というのがこの話の難しいところです。 相続時精算課税は、一度選ぶと暦年課税に戻せません (その贈与者からの贈与について)。次のような場合は暦年課税が向きます。
- 年110万円を超えて、多くを早く渡したい — 精算課税では超えた分が期間の制限なく全額足し戻されます。 暦年課税なら、8年以上前の贈与は足し戻されません。
- 相続人でない人に渡したい — 孫や子の配偶者など、相続で財産を受け取らない人への贈与は そもそも足し戻しの対象外です。この場合、暦年課税で渡すほうが単純です。
- まだ十分に長い期間が見込める — 7年より先まで続けられるなら、暦年課税でも足し戻しは頭打ちになります。
- そもそも相続税がかからない — 遺産が基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)以下なら、 どちらを選んでも相続税は0です。
最後の点は先に確認しておく価値があります。 相続税シミュレーターで、 そもそも課税されるかどうかが分かります。 かからないなら、この記事の話は全部関係ありません。
始めるときに気をつけること
- 相続時精算課税は届出が要ります。 贈与を受けた年の翌年、確定申告の期間に「相続時精算課税選択届出書」を出します。 出し忘れると暦年課税のままです。
- 年110万円以内でも、申告が必要な場合があります。 精算課税を選んだ初年度は届出のために申告します。 制度によって扱いが違うので、初回は特に確認してください。
- 渡した証拠を残します。 銀行振込にする、贈与契約書を作る、受け取る側が自分で管理する。 名義だけ変えて親が通帳を持っている状態は、贈与と認められないことがあります。
- 毎年同じ日に同じ額、は避けます。 最初からまとまった額を分割で渡す約束だった、と見られるおそれがあります。
関連するツールと記事
- 相続税シミュレーター — そもそも課税されるかを先に確認
- 贈与税シミュレーター — 年110万円を超えて渡す場合
- 親が亡くなったときのお金と手続き — 期限の早い順に
- 固定資産税シミュレーター — 実家を引き継ぐ場合
本記事の金額は概算です。相続税は遺産の内訳(不動産の評価、小規模宅地等の特例など)や遺産分割の仕方で大きく変わり、ここでは法定相続分どおりに分けた前提で計算しています。相続時精算課税は一度選ぶと撤回できず、適用には年齢などの要件があります。実際の判断は税務署または相続に詳しい税理士にご相談ください。