親が施設に入るときのお金
最終更新: 2026年8月12日
施設を探しはじめると、まず費用を調べます。 でもその前に決めておいたほうがいいことがあります。 誰のお金で払うのかです。
原則
施設の費用は、親本人のお金(年金・預貯金・資産)から払います。 子が負担するのは、それで足りない場合です。
当たり前のことに見えますが、実際には 近くに住んでいる子が、とりあえず立て替えるという形で 始まることがよくあります。急ぐ場面なので自然な流れです。 問題は、これが何年も続いたあとに起こります。
立て替えるなら、記録を残す
相続のときに「自分が何百万円も出した」と主張しても、 記録がなければ認められにくいのが実際です。 きょうだい間で話がこじれる原因の上位に入ります。
- 親名義の口座から払う。いちばん確実です。 振込や引き落としの記録がそのまま証拠になります
- やむを得ず立て替えたら、その都度メモを残す。 日付・金額・何の費用か。領収書と一緒に保管します
- きょうだいに、その時点で共有する。 あとからまとめて説明するより、はるかに揉めません
- 親の判断力があるうちに話しておく。 本人の意思が確認できる時期を過ぎると、選べる手段が減ります
なお、親の口座からお金を動かす必要があるのに 本人の判断力が低下している場合、 家族でも自由には引き出せなくなります。 そうなる前に、支払い方法を整理しておくのが実務的です。
費用は「一時金」と「月額」に分かれる
| 施設の種類 | 入居時 | 月額 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム 原則として要介護3以上。費用は抑えられますが、希望しても待つことがあります。 | 不要なことが多い | 比較的おさえめ |
| 介護老人保健施設 在宅復帰を目指す施設のため、長期の入所を前提としていません。 | 不要なことが多い | 比較的おさえめ |
| 介護付き有料老人ホーム 入居一時金の有無と額で総額が大きく変わります。月額だけで比べないこと。 | 0円〜数千万円 | 幅が大きい |
| サービス付き高齢者向け住宅 住宅なので、介護サービスは別に契約します。必要が増えると費用も増えます。 | 敷金程度 | 家賃+サービス |
月額だけで比べると判断を誤ります。 入居一時金がある施設は月額が抑えられていることが多く、 長く住むほど有利になります。 逆に短期間で退去すると、償却の仕組みによっては戻る額が少なくなります。 契約前に「何年で全額償却されるか」「途中で退去したらいくら戻るか」を 必ず確認してください。
月額の中身
「月額◯万円」と書かれていても、そこに何が含まれるかは施設ごとに違います。 含まれていないものが、あとから積み上がります。
家賃・居住費
部屋の広さと立地で大きく変わる。ここが差の大半
食費
施設が提供。入院などで不在でも一部かかることがある
管理費・共益費
光熱費や共用部分の維持
介護サービスの自己負担
所得に応じて1〜3割。要介護度でも変わる
医療費・薬代
施設費とは別。持病があると効いてくる
日用品・おむつ・理美容
実費。月々の細かい積み重ね
見積もりをもらったら、この6つが全部入っているかを確認してください。 とくに医療費と日用品は施設費と別扱いのことが多く、 パンフレットの金額には含まれていません。 持病がある場合、ここが月に数万円の差になることがあります。
負担を軽くする制度
申請すれば使えるものがあります。どれも自動では適用されません。
- 高額介護サービス費。 介護サービスの自己負担には、所得に応じた月の上限があります。 超えた分はあとから戻ります。 初回は申請が必要で、以降は自動で振り込まれるのが一般的です。
- 負担限度額認定。 所得と資産が一定以下の場合、 施設の食費と居住費が軽減されます。 対象になるかどうかは市区町村が判定します。
- 高額医療・高額介護合算制度。 1年間の医療費と介護費を合算して上限を超えた分が戻ります。 両方かかっている場合、これを知らずにいると取りこぼします。
- 医療費控除。 施設の費用のうち、一部が医療費控除の対象になることがあります。 施設の種類と費目によるので、領収書の内訳を確認してください。
これらの相談先はケアマネジャーか市区町村の窓口です。 施設側から積極的に案内があるとは限らないので、 こちらから聞いてください。 「使える制度はありますか」の一言で十分です。
年金で足りるかを見る
判断の起点になるのは、親の年金額と月額費用の差です。 足りない分を、預貯金から何年取り崩せるか。
月額費用 − 年金月額 = 毎月の不足
預貯金 ÷ 毎月の不足 = 持つ月数
この月数が親の想定される入所期間より短いなら、 施設の選び直しか、家族の負担か、資産の整理かを検討することになります。 入る前に出しておくのが大事です。 入居してから足りないと分かると、選択肢がかなり狭くなります。
持ち家がある場合、売却するのか、空き家のまま維持するのかも 早めに決めておくと動きやすくなります。 維持にも固定資産税や管理の費用がかかります。
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本記事は一般的な制度と費用の考え方の説明です。施設の費用・契約条件・償却の仕組みは施設ごとに異なります。介護保険の自己負担割合、高額介護サービス費の上限額、負担限度額認定の要件は所得や資産の状況、および制度改正によって変わります。医療費控除の対象範囲も施設の種類と費目によって異なります。実際の判断にあたっては、ケアマネジャー、お住まいの市区町村の窓口、地域包括支援センター、税務署などへご相談ください。