医療費控除は、家族の誰がまとめると得か

最終更新: 2026年8月11日

家族の医療費は合算して1人がまとめて申告できます。 では誰の名前で出すのがいいか。よく言われるのは「所得が高い人」ですが、 これは半分だけ正解です。

逆向きの2つの力が働いている

戻る額は、次の掛け算で決まります。

戻る額 =(医療費 − 足切り額)×(所得税率 + 住民税率)

そして、2つの要素が別々の人に味方します。

夫(年収600万円) 妻(年収250万円) 有利なのは
足切り額 ¥100,000 ¥83,500 所得が低いほう
戻る率 20.2% 15.1% 所得が高いほう

足切り額は原則10万円ですが、 総所得金額等が200万円未満の人は「所得の5%」になります。 年収250万円なら¥83,500、 年収180万円なら¥57,500。 医療費のうち控除の対象になる部分が増えるということです。

つまり、医療費が少ないうちは足切りの差が効いて低所得側が有利、 多くなると税率の差が効いて高所得側が有利になります。 どこかで入れ替わります。

入れ替わる金額を計算した

前提:夫(年収600万円)と妻(年収250万円)の2人。単身・他の控除は考慮しない概算です。 保険金などで補填された額は差し引いた後の医療費で見てください。

医療費 夫が申告 妻が申告 得なのは
12万円 ¥4,040 ¥5,512 ¥1,472
15万円 ¥10,100 ¥10,042 ¥58
20万円 ¥20,200 ¥17,592 ¥2,608
30万円 ¥40,400 ¥32,692 ¥7,708
50万円 ¥80,800 ¥62,892 ¥17,908
100万円 ¥181,800 ¥138,392 ¥43,408

分かれ目は医療費15万円でした。 これを下回るなら妻、上回るなら夫が申告したほうが多く戻ります。 医療費12万円なら妻のほうが¥1,472多く、 100万円なら夫のほうが¥43,408多くなります。

相手の所得が低いほど、分かれ目は後ろにずれる

妻の年収を180万円にすると、足切り額は¥57,500まで下がります。 同じ計算をやり直すと、こうなります。

医療費 夫が申告 妻が申告 得なのは
12万円 ¥4,040 ¥9,438
15万円 ¥10,100 ¥13,968
20万円 ¥20,200 ¥21,518
30万円 ¥40,400 ¥36,618
50万円 ¥80,800 ¥66,818
100万円 ¥181,800 ¥142,318

分かれ目が15万円から23万円へ後ろにずれました。 パートで働いている配偶者がいる家庭では、 年間の医療費が20万円前後までなら、配偶者側で申告したほうが得になることが あるということです。

ただし、税金を払っていないと戻りません

医療費控除は払った税金が戻ってくる制度です。 申告する人がそもそも所得税・住民税を払っていなければ、どれだけ医療費があっても0円です。

とくに次の場合は注意してください。

  • 収入が少なく、もともと税金がかかっていない — 年収160万円以下だと所得税がかからないため、所得税からは戻りません (103万円の壁の記事で詳しく書いています)。
  • 住宅ローン控除で所得税がすでに0になっている — 控除しきれていない場合、医療費控除を足しても戻る額が増えないことがあります。
  • ふるさと納税を上限いっぱいまでしている — 医療費控除で課税所得が下がると、ふるさと納税の上限も下がります。 上限を超えた分は自己負担になるので、両方やる年は注意が必要です。

合算できる範囲

生計を一にする家族の医療費なら、まとめて1人が申告できます。 同居している必要はありません。

  • 配偶者、子ども、親
  • 仕送りをしている親(別居でも可)
  • 下宿している子ども
  • 共働きで配偶者を扶養していなくても合算は可能

ただし「誰が実際に支払ったか」の実態は問われます。 口座から引き落とされている人と、申告する人がまったく無関係というのは無理があります。 判断に迷う場合は税務署に確認してください。

なお、医療費控除の上限は200万円です。 これを超える医療費があった年は、超えた分を別の人に回しても控除は増えません。

手順と、対象になるもの

申告のやり方、明細書の作り方、対象になる費用・ならない費用は 医療費控除のやり方にまとめています。 セルフメディケーション税制との選び方もそちらです。

本記事の金額は概算です。控除は基礎控除と社会保険料控除のみを考慮しており、扶養控除・配偶者控除・生命保険料控除などは含めていません。総所得金額等の算定や「生計を一にする」の判断は個別の事情によります。実際の申告にあたっては、国税庁の案内または税務署にご確認ください。

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社会保障の給付(失業・傷病・出産・育児・医療)2026年8月時点

  • 育児休業給付金開始から180日は67%、以降50%
  • 育休中の社会保険料免除給付金は非課税
  • 傷病手当金標準報酬日額の2/3通算1年6か月
  • 出産手当金標準報酬日額の2/3
  • 出産育児一時金50万円
  • 医療費控除の足切り10万円総所得金額等が200万円未満なら5%
  • 医療費控除の上限200万円
  • セルフメディケーション税制1.2万円超・上限8.8万円
  • 医療費の自己負担割合原則3割

雇用保険の給付額には毎年8月に改定される上限額があります。高額療養費の自己負担限度額は所得区分によって変わり、制度見直しの議論が続いている分野です。

出典: 厚生労働省「雇用保険制度」全国健康保険協会「傷病手当金」全国健康保険協会「高額療養費」国税庁「医療費を支払ったとき」

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