「103万円の壁」はどこへ行ったのか

最終更新: 2026年8月11日

長いあいだ扶養の話の中心にあった「103万円の壁」は、令和7年分の改正で なくなったのではなく、2つに分かれました。 いま混乱が起きているのは、この2つが同じ「103万円」という言葉で語られていたからです。

123万円

配偶者控除の上限

配偶者側の税金の話。
ここを超えると、配偶者が受ける38万円の控除が 配偶者特別控除に切り替わります。

160万円

所得税がかかり始める

本人の税金の話。
ここまでは働いても所得税は0円です。 超えても、超えた分にだけかかります。

なぜ2つに分かれたのか

もともと103万円という数字は、次の足し算から来ていました。

給与所得控除 55万円 + 基礎控除 48万円 = 103万円

「収入からこれだけ引けるので、ここまでなら課税所得が0になる」という金額です。 そして偶然にも、配偶者控除を受けられる配偶者の年収の上限も同じ103万円でした。 配偶者控除の条件が「合計所得金額48万円以下」で、 給与所得控除55万円を足すとやはり103万円になったからです。

改正で、この2つが別々に動きました。

改正前 改正後(令和7年分〜)
給与所得控除の最低額 55万円 65万円
基礎控除(この年収帯) 48万円 95万円
→ 所得税がかかり始める年収 103万円 160万円
配偶者控除の所得要件 48万円 58万円
→ 配偶者控除が使える年収 103万円 123万円

基礎控除は合計所得金額に応じた段階制になり、 この年収帯(合計所得金額132万円以下)では95万円が適用されます。 一方、配偶者控除の所得要件は58万円に上がっただけなので、 給与収入に直すと123万円。ここで2つの数字が離れました。

壁の一覧(改正後)

「本人の話」と「配偶者の話」が混ざるとわからなくなるので、分けて並べます。

年収 何が起きるか 誰の 手取りへの影響
100万円 住民税がかかり始める 自治体により93〜100万円。均等割から発生します 本人
106万円 勤務先の社会保険に加入する 従業員数などの要件を満たす勤務先の場合のみ 本人
123万円 配偶者控除(38万円)の上限 旧「103万円の壁」の片方。超えても配偶者特別控除が続きます 配偶者
130万円 扶養から外れて社会保険に加入する 勤務先を問わず全員に関係します 本人
150万円 配偶者特別控除が満額から減り始める いきなり消えるのではなく段階的に減ります 配偶者
160万円 本人に所得税がかかり始める 旧「103万円の壁」のもう片方。超えた分にだけ課税されます 本人
201万円 配偶者特別控除がなくなる ここまで来ると配偶者側の控除は完全になくなります 配偶者

結論:気にする順番は変わっていない

改正で税金の壁は上がりましたが、手取りにいちばん効くのは、 いまも社会保険の壁(106万円・130万円)です

  • 130万円を超えて社会保険に加入すると — 手取りが一気に約19.5万円下がります (¥1,272,999 → ¥1,078,000)
  • 160万円を超えて所得税がかかっても — 10万円超えた時点で所得税は¥5,000。 手取りは減るどころか増えています

桁が違います。税金の壁は「越えても損しない壁」、 社会保険の壁は「越えると一時的に損する壁」と覚えておくと、判断を間違えません。 社会保険の壁でいくら減り、いくらまで働けば戻るのかは 年収の壁で手取りはいくら減るのかで 1万円刻みに計算しています。

103万円を意識して働いてきた人がやること

  1. 自分がどの壁を気にしていたのかを確かめる。 配偶者の会社の家族手当の条件だったのか、自分の所得税だったのか、 社会保険の扶養だったのかで、新しい目標額が変わります。
  2. 勤務先の家族手当の条件を見る。 就業規則が「103万円以下」のままなら、制度が変わっても手当の条件は変わりません。 ここが実際の手取りにいちばん効いていることがあります。
  3. 社会保険に入るかどうかを決める。 金額の話ではなく、働き方の話です。 パート・共働きの働き方と手取りで整理しています。

大学生の子どもがいる場合

19歳以上23歳未満の子を扶養している場合の控除も、あわせて見直されました。 従来は子の年収が103万円を超えると扶養控除(63万円)が一気になくなりましたが、 特定親族特別控除が新設され、 子の年収150万円までは同額の控除が受けられるようになっています。 それを超えても段階的に減る仕組みなので、1円超えて全部なくなるという構造ではなくなりました

具体的な控除額の区分は改正されたばかりの部分なので、 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」 で最新の内容をご確認ください。

自分の年収で確かめる

本記事は改正内容の概要をまとめたものです。基礎控除は合計所得金額に応じて段階的に変わり、住民税の非課税限度額は自治体と扶養親族の人数で異なります。特定親族特別控除など新設された制度の詳細な区分は、国税庁の最新の案内でご確認ください。勤務先の家族手当の条件は就業規則によります。

このツールが使っている税率・料率は 2026年8月時点のものです。 使用している数値と出典を見る

このページの数値と出典

このページで使っている値と、その根拠です。制度の数値も各社の料金も改定されるため、 判断の前には出典元でお確かめください。

給与の手取り(所得税・住民税・社会保険料)2026年8月時点

  • 健康保険(本人負担)5.0%協会けんぽ全国平均10%の半分
  • 介護保険(40〜64歳・本人負担)0.8%
  • 厚生年金(本人負担)9.15%18.3%の半分
  • 雇用保険(本人負担)0.6%一般の事業
  • 所得税の基礎控除58〜95万円令和7年分から合計所得金額に応じた段階制。132万円以下は95万円
  • 住民税の基礎控除43万円
  • 住民税(所得割)10%
  • 住民税(均等割)5,000円自治体により差があります
  • 復興特別所得税所得税額の2.1%
  • 給与所得控除令和7年分以降の速算表最低保障額65万円(収入190万円以下)
  • 所得税の税率5%〜45%の7段階(累進)

社会保険料は全国平均の料率を年収に対して概算で掛けています。実際は標準報酬月額の等級表で決まり、加入している健康保険組合や都道府県によって変わります。扶養・生命保険料控除などの所得控除は含めていません。

出典: 国税庁「所得税の税率」国税庁「給与所得控除」国税庁「基礎控除」全国健康保険協会「保険料額表」日本年金機構「厚生年金保険の保険料」

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