副業は住民税で会社に伝わるのか

最終更新: 2026年8月12日

「確定申告で普通徴収(自分で納付)を選べば大丈夫」—— よく見る説明ですが、これが当てはまらない副業があります。 そして、当てはまらないのはいちばん人数が多い種類です。

結論

副業がアルバイト・パート(給与所得)なら、
「自分で納付」は選べません。

副業が業務委託・物販などであれば選べます。種類で結論が変わります。

なぜ給与だけ選べないのか

確定申告書には、住民税の納め方を選ぶ欄があります。 ただしその欄の名前をよく見ると、こう書かれています。

給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法

「給与以外の所得に係る」と限定されています。 つまり給与所得については、そもそも選択肢がありません。

さらに、複数の給与がある場合の扱いも決まっています。 自治体の案内では、すべての給与を合算して税額を計算し、 主たる給与の事業者(通常は本業の勤務先)から特別徴収するとされています。 これは令和5年度以降の取り扱いです。

その結果、本業の会社に届く住民税の通知には 副業分を含んだ金額が載ります。 給与の額に対して住民税が明らかに高ければ、 経理の担当者が気づくことはあります。

種類別の結論

副業の種類 自分で納付 どうなるか
アルバイト・パート(給与所得) 飲食店、コンビニ、単発の日雇い、業務委託でも給与として支払われるもの 選べない 本業の会社から、副業分もまとめて天引きされます
業務委託・フリーランス(事業所得・雑所得) ライティング、デザイン、開発、動画編集、コンサル 選べる 確定申告で「自分で納付」を選べば、副業分は自分に納付書が届きます
物販・ネット販売(事業所得・雑所得) フリマ、ハンドメイド、せどり 選べる 同上。給与ではないため分けられます
配当・株の利益 特定口座(源泉徴収あり)の場合 申告不要 申告しなければ住民税の通知にも出ません
不動産の賃貸 アパート、駐車場 選べる 給与ではないため分けられます

分かれ目は「給与として支払われているか」の一点です。 契約書の名前ではなく、実際にどう支払われているかで決まります。 源泉徴収票が出るなら給与、支払調書や請求書ベースなら事業所得・雑所得、 というのが目安になります。

「2026年度から廃止された」という話について

この件で「2026年度から普通徴収が廃止された」という記述を見かけますが、 正確ではありません。給与所得については以前から特別徴収が原則で、 新たに廃止された制度があるわけではありません。 複数の給与を合算する取り扱いも令和5年度以降のもので、2026年に始まったものではありません。

ただし結論そのものは変わりません。 給与所得の副業は普通徴収を選べない、という点は正しく、 注意が必要な話であることに変わりはありません。 年度の記述だけが誤って広まっている、という状況です。

事業者側から普通徴収にできる場合

給与でも例外的に普通徴収になることはあります。 ただしこれは働いている本人が選ぶものではなく、 支払う事業者が理由を示して届け出るものです。 理由も限定されています。

  • その事業者の従業員が少数である
  • 他の事業所ですでに特別徴収されている
  • 給与が少なく、天引きするだけの額がない
  • 給与の支払いが不定期である
  • 個人事業主の専従者である
  • 退職した、または5月末までに退職予定である

「他の事業所で特別徴収されている」に該当すれば副業先では天引きされませんが、 その場合副業分も含めた税額が本業側で徴収されます。 結局、本業の会社に金額としては伝わります。

伝わる経路は住民税だけではない

住民税の話ばかりが注目されますが、実際にはこちらのほうが多い印象です。

  • 社会保険 — 副業先でも加入要件を満たすと、手続きの過程で判明します
  • 本人が話す — 同僚に話す、SNSに書く。いちばん多い経路です
  • 成果物が見られる — 実名で活動していれば、当然たどり着かれます
  • 本業に影響が出る — 疲れて遅刻が増える、集中できていない

そもそも、隠す前提でいいのか

隠す方法を探す前に、確認しておいたほうがいいことがあります。

  1. 就業規則を読む。 全面禁止なのか、届け出れば可なのか、競業だけ禁止なのか。 読まずに「たぶんダメ」と思い込んでいるケースは珍しくありません。
  2. 禁止の理由を確認する。 本業への支障、情報漏えい、競業。 理由に当たらない副業なら、届け出れば通ることもあります。
  3. 申告はする。 会社に伝わるかどうかと、税務署に申告するかどうかは別の話です。 申告しないことのリスクのほうが大きいのは、間違いありません。

なお、この記事は隠す方法を勧めるものではありません。 仕組みを正しく知らないまま「普通徴収にしたから大丈夫」と考えているほうが、 結果的に困ることになるためまとめています。

関連するツールと記事

本記事は自治体が公表している一般的な取り扱いをまとめたものです。住民税の徴収方法の運用や、普通徴収への切替が認められる範囲は自治体によって異なる場合があります。所得の区分(給与所得か事業所得・雑所得か)は契約の名称ではなく実態で判断されます。実際の手続きはお住まいの自治体または税務署にご確認ください。勤務先の副業に関する規程は就業規則によります。

このツールが使っている税率・料率は 2026年8月時点のものです。 使用している数値と出典を見る

このページの数値と出典

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給与の手取り(所得税・住民税・社会保険料)2026年8月時点

  • 健康保険(本人負担)5.0%協会けんぽ全国平均10%の半分
  • 介護保険(40〜64歳・本人負担)0.8%
  • 厚生年金(本人負担)9.15%18.3%の半分
  • 雇用保険(本人負担)0.6%一般の事業
  • 所得税の基礎控除58〜95万円令和7年分から合計所得金額に応じた段階制。132万円以下は95万円
  • 住民税の基礎控除43万円
  • 住民税(所得割)10%
  • 住民税(均等割)5,000円自治体により差があります
  • 復興特別所得税所得税額の2.1%
  • 給与所得控除令和7年分以降の速算表最低保障額65万円(収入190万円以下)
  • 所得税の税率5%〜45%の7段階(累進)

社会保険料は全国平均の料率を年収に対して概算で掛けています。実際は標準報酬月額の等級表で決まり、加入している健康保険組合や都道府県によって変わります。扶養・生命保険料控除などの所得控除は含めていません。

出典: 国税庁「所得税の税率」国税庁「給与所得控除」国税庁「基礎控除」全国健康保険協会「保険料額表」日本年金機構「厚生年金保険の保険料」

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