賃貸と持ち家、50年で総額はどれだけ違うか
最終更新: 2026年8月11日
この比較でいちばん結論を左右するのは、金利でも物件価格でもありません。 「家賃はずっと同じ」と置くかどうかです。 多くの試算がここを0%のまま計算していて、それだけで答えが変わります。 条件を固定して、10年から50年まで計算しました。
計算の前提
賃貸
- 家賃(管理費込み)月¥120,000
- 更新料 2年ごとに¥120,000
- 初期費用 ¥500,000
購入
- 物件価格 4,000万円、頭金 400万円
- 金利 1%・35年(元利均等)
- 諸費用 280万円
- 固定資産税 年¥120,000
- 管理費+修繕積立金 月¥25,000
購入の総額からは、住み終えた時点で残る資産価値を引いています (築年数が進むほど下がる想定:年1.6ポイントずつ下がり、20%で下げ止まる直線)。 住宅ローン控除と、頭金を運用した場合の機会費用は含めていません。
結果:家賃が上がるかどうかで、答えが変わる
表の数字は賃貸の総額 − 購入の実質総額です。 プラスなら購入が安く、マイナスなら賃貸が安いという意味になります。
| 住む年数 | 家賃上昇 年0% | 家賃上昇 年1% | 家賃上昇 年2% | 残る資産価値 |
|---|---|---|---|---|
| 10年 | − 458万円 | − 389万円 | − 315万円 | 84% |
| 20年 | − 18万円 | + 285万円 | + 628万円 | 68% |
| 30年 | + 422万円 | + 1,141万円 | + 2,009万円 | 52% |
| 40年 | + 862万円 | + 2,196万円 | + 3,926万円 | 36% |
| 50年 | + 1,302万円 | + 3,473万円 | + 6,494万円 | 20% |
色がついているセルは購入が安いという意味です。 なお「残る資産価値」はこの計算でいちばん結果を動かす仮定で、ここでは強気寄りに置いています。 売れない立地であればこの列を大きく下げる必要があり、そうすると購入側は一気に不利になります。 シミュレーターで自分の想定に置き換えてみてください。
逆転する年
購入が安くなる最初の年を、上昇率ごとに探しました。
| 家賃の上昇率 | 購入が安くなる年 |
|---|---|
| 年0%(ずっと同じ家賃) | 21年目 |
| 年1%(50年で64%上昇) | 17年目 |
| 年2%(50年で169%上昇) | 14年目 |
家賃が据え置きなら21年目、年1%上がるなら17年目、 年2%なら14年目。 同じ物件・同じ家賃なのに、この1つの前提だけで 7年ずれます。
家賃が年1%というのは、月¥120,000の部屋が 30年後に月¥160,140になるという意味です。 決して極端な想定ではありません。 「ずっと同じ家賃」のほうが、むしろ強い仮定を置いていることになります。
短く住むなら、賃貸が圧倒的に有利
10年の行を見てください。どの上昇率でも賃貸が 458万円前後安くなります。 理由は単純で、購入の初期費用が大きすぎるからです。
- 購入諸費用 280万円(登記・仲介手数料・印紙・ローン手数料など)
- 返済の初期は利息の割合が大きく、元金があまり減らない
- 売るときにも仲介手数料がかかる(この計算には入れていません)
転勤の可能性がある、家族構成が変わりそう、その土地に住み続けるか決めていない。 こうした状況では、金額の比較をするまでもなく賃貸です。 「家賃はもったいない」という言葉に押されて短期で買うのが、 いちばん損をしやすいパターンになります。
この計算に入れていないもの
正直に書いておきます。次のものは含めていません。 どれも結論を動かしうるので、自分の条件で足し引きしてください。
- 住宅ローン控除 — 購入側に有利に働きます。 残高の0.7%が最大13年間戻るので、数百万円の差になることもあります (住宅ローン控除でいくら戻るかで試算できます)。
- 頭金を運用した場合の機会費用 — 賃貸側に有利に働きます。 400万円を年3%で運用すれば、30年で2倍以上になります。
- 大規模修繕の一時金・修繕積立金の値上げ — 購入側の負担が増えます。 新築時の積立金は低く設定されていることが多く、段階的に上がります。
- 賃貸の更新・引っ越し費用 — 50年住めば数回は引っ越します。
- 住み替えの自由と、老後に借りにくくなる問題 — 金額に換算できない部分です。
結論の出し方
この比較に「どちらが得か」という一般解はありません。 決めるべきなのは金額ではなく、次の2つです。
- その家に何年住むか。 10年以内なら賃貸、20年を大きく超えるなら購入。この線引きだけで大半は決まります。
- 家賃が上がらないと思うか。 上がると考えるなら、逆転は表よりさらに早く来ます。
迷ったときは、10年後に確実に売れる物件かどうかを見るのが実用的です。 売れるなら、間違えたときに戻れます。この計算で「残る資産価値」の割合が効いてくるのは、 そういう意味です。
自分の条件で計算する
- 賃貸 vs 購入 比較シミュレーター — 家賃・物件価格・金利を入れて総額を比べる
- 住宅ローンシミュレーター — 毎月の返済額と総返済額
- 借入可能額シミュレーター — 年収からいくらまで借りられるか
- 家を買うときのお金の全体像 — 予算の決め方から入居後まで
本記事の金額は概算です。元利均等返済を前提とし、住宅ローン控除・頭金の機会費用・売却時の仲介手数料・引っ越し費用・大規模修繕の一時金は含めていません。資産価値の残存率は仮定であり、実際の価格は立地・築年数・市況で大きく変わります。将来の家賃・地価・金利を予測するものではありません。