家賃の値上げは断れるか

最終更新: 2026年10月7日

更新の時期に「来月から家賃を上げます。ご了承いただけない場合は更新できません」という通知が届く。 物価が上がるなかで、こうした話を見かけることが増えました。 同意しなければ出ていくしかないのか、借地借家法の条文に沿って整理します。

先に結論

  • 貸主が値上げを求めること自体は、法律で認められています。
  • ただし普通の賃貸借契約なら、同意しないだけで更新できなくなるわけではありません。
  • 話し合いがつかないあいだは、借主が相当と思う額(ふつうは今までの家賃)を払っておけば足ります。
  • 定期借家契約は例外で、もともと更新がありません。

値上げを求めること自体は、法律で認められている

借地借家法32条1項は、家賃が次のような理由で「不相当となったとき」に、貸主も借主も将来に向かって家賃の増減を請求できると定めています。

  • 土地や建物にかかる税金などの負担が増えたり減ったりした
  • 土地や建物の価格が上がったり下がったりした、その他経済の事情が変わった
  • 近くの同じような建物の家賃と比べて不相当になった

つまり値上げの通知は、法律にもとづく正式な申し入れです。 ただし、請求できることと、その金額で決まることは別です。 金額は話し合いで決まり、まとまらなければ調停や裁判で決まります。

なお同じ条文には、「一定の期間は家賃を上げない」という特約がある場合はそれに従う、とも書かれています。 契約書にそうした特約がないか、最初に確かめておく価値があります。

同意しないと更新できない、は本当か

定期借家ではない普通の賃貸借契約なら、そうとは限りません。根拠は2つの条文です。

期限までに通知がなければ、同じ条件で更新される(26条)

期間の定めがある契約で、貸主が期間満了の1年前から6か月前までに「更新しない」または「条件を変えなければ更新しない」と通知しなかった場合、 契約は今までと同じ条件で更新したものとみなされます。 これを法定更新と呼びます。この場合、更新後は期間の定めがない契約になります。

通知をした場合でも、期間が終わったあと借主が住み続け、貸主が遅れずに異議を述べなければ、同じく更新したものとみなされます。

更新を拒むには、正当の事由がいる(28条)

貸主が更新を拒むには、正当の事由があると認められる必要があります。 判断では、貸主と借主それぞれが建物を使う必要性、これまでの経過、建物の利用状況や現況、 立ち退き料などの申し出が考慮されます。 さらに30条で、これらの規定より借主に不利な特約は無効とされています。

値上げに同意しないというだけで、この正当の事由が認められるかは疑問です。 ただ、最終的な判断は個別の事情によるので、ここでは「同意しないだけで出ていかなければならないわけではない」までにとどめます。

話し合いがつかないあいだは、いくら払うか

32条2項に答えがあります。増額について話し合いがまとまらないときは、 増額が正しいとする裁判が確定するまで、借主が相当と認める額を払えば足ります。 ふつうは今までの家賃を払い続けることになります。

注意点もあります。後で裁判で増額が確定した場合、払っていた額との差額に年1割の利息を付けて払わなければなりません。 相場から見て値上げに理由がある場合は、話し合いで落としどころを探すほうが結果的に安く済むこともあります。

受け取りを拒まれたら、供託する

貸主が「値上げ後の額でなければ受け取らない」と言うこともあります。 そのまま払わずにいると滞納と受け取られかねません。 民法494条では、支払おうとしたのに受け取りを拒まれた場合、法務局に供託することができ、供託した時点で支払い義務は消えるとされています。

裁判の前に、まず調停

家賃の増減をめぐって裁判を起こすには、その前に調停を申し立てる決まりです(民事調停法24条の2)。 いきなり裁判を起こしても、原則として調停に回されます。 調停は簡易裁判所で、話し合いによる解決を目指す手続きです。

定期借家契約なら話が違う

契約書に「定期建物賃貸借」「契約の更新がない」と書かれている場合は、ここまでの話が当てはまりません。 借地借家法38条により、書面で更新がないと定めた契約は、期間が来れば終わります。 続けて住むには新しく契約を結ぶ必要があり、その条件として家賃の値上げを示されることはありえます。

自分の契約がどちらかは、契約書の表題と、契約前に受け取った説明書面で確かめられます。

通知が来たら、この順番で

  1. 契約書を確かめる。 普通借家か定期借家か、家賃を上げない特約があるか、更新料の定めはどうなっているか。
  2. 値上げの理由を聞く。 税金の負担、建物の価値、近くの家賃と比べてどうか。32条の理由に当てはまるかが話し合いの軸になります。
  3. 近くの同じような部屋の家賃を調べる。 値上げ後の額が相場より高いなら、それが交渉の材料になります。
  4. 受け入れた場合と引っ越した場合の総額を比べる。 家賃の値上げ、受け入れるか引っ越すかで、何か月で引っ越しの元が取れるかを計算できます。
  5. まとまらなければ、今までの家賃を払い続けて相談する。 消費者ホットライン188に電話すると、近くの消費生活センターなどの相談窓口を案内してもらえます。

関連する計算と記事

本記事は借地借家法などの条文にもとづく一般的な説明であり、個別の事案での結論を示すものではありません。正当事由の有無や相当な家賃の額は、契約の内容や個別の事情によって判断されます。具体的なトラブルは、消費生活センター(消費者ホットライン188)、弁護士などの専門家にご相談ください。出典:e-Gov法令検索「借地借家法」第26条・第28条・第30条・第32条・第38条、「民事調停法」第24条の2、「民法」第494条、消費者庁「消費者ホットライン」。

このツールが使っている法律の根拠は 2026年10月時点のものです。 使用している数値と出典を見る

このページの数値と出典

このページで使っている値と、その根拠です。制度の数値も各社の料金も改定されるため、 判断の前には出典元でお確かめください。

賃貸住宅の契約(家賃の改定・更新・退去)2026年10月時点

  • 家賃の増減の請求借地借家法32条税負担・経済事情の変動・近隣の家賃と比べて不相当になったとき。増額しない特約があればそれに従う
  • 話し合いがつかないあいだの家賃借主が相当と認める額裁判で増額が確定したら、不足額に年1割の利息を付けて支払う(32条2項)
  • 法定更新借地借家法26条期間満了の1年前〜6か月前に通知がなければ、従前と同じ条件で更新したものとみなす
  • 貸主の更新拒絶正当の事由が必要借地借家法28条。借主に不利な特約は無効(30条)
  • 定期建物賃貸借更新なし書面で定めた場合(借地借家法38条)
  • 家賃の増減をめぐる訴え先に調停民事調停法24条の2
  • 経年変化・通常損耗の修繕費原則として貸主の負担国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

条文にもとづく一般的な説明です。正当事由の有無や相当な家賃の額は、契約の内容と個別の事情で判断されます。初期費用・更新料の目安は地域や物件で大きく変わります。

出典: e-Gov法令検索「借地借家法」/e-Gov法令検索「民事調停法」/e-Gov法令検索「民法」/国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」/消費者庁「消費者ホットライン」

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